正当防衛と過剰防衛

 考えたくはないことですが、たまたま泥棒と自分の家の中で鉢合わせしてしまったらどうなるのでしょう。盗犯等防止法という法律があり、その中では正当防衛の特例が規定されています。大切なものを取られないようにするため、もしくは取られたものを取り返そうおしたとき。凶器を持った犯人や、誰かが不法に侵入しようとしていたとき。不法に侵入した泥棒を追い返そうとするとき。このような場合に、自分や家族を守るために犯人を殺傷したとしても、正当防衛になるという特例です。
 泥棒や強盗に限らず、犯罪者に対して自分の安全を守るための行為は正当防衛です。ですが、引ったくりや痴漢など、家の外で起こる犯罪に対しての正当防衛と、家の中に侵入され泥棒や強盗に対して行う正当防衛では、正当防衛として認められる範囲が異なります。この特例が認められているのは、通常の正当防衛よりも、「正当防衛である」と認められやすいという事です。自分が安心して過ごせるはずの家に、見知らぬ誰かかいたらパニックを起こしても不思議はありません。ですから、場合によっては、犯人を殺してしまっても正当防衛であると認められることもあります。
 通常正当防衛とは、自分の身を守るためにやむを得ず、犯人にけがを負わせてしまったりすることです。自分の安全のためなのですから、「やりすぎだ」と罪に問われるのは変な話でもありますが、正当防衛の域を超えてしまった場合、過剰防衛ということになります。そして正当防衛は合法、過剰防衛は違法行為となります。それでは、正当防衛と過剰防衛、その境界線はどこになるのでしょう。正当防衛として認められる要件は、急迫性の侵害、その侵害が不正であること、自己または他人の権利防衛という状況であり、やむを得ず、防衛のために行った行為であることです。泥棒と家の中で鉢合わせしてしまった場合は、凶器を持っていた犯人に脅された、というような状況でなくても急迫性の侵害になるのです。ちなみに、誰かを害そうとして、逆に相手に殺されそうになった場合はもちろん急迫性の侵害には当たりません。痴漢をしようとしたら殺されそうになり、身の危険を感じて相手を殺してしまった、などという場合はもちろん正当防衛は認められません。
 ところで日本は、他国に比較して、この正当防衛の要件が厳しいと言われています。それもそのはずで、日本はそもそも、自衛のためとはいえ、一般市民が武器を持つ事が許されていません。アメリカで、ポケットや胸に手を入れたからという理由で、銃で撃ち殺したとしても正当防衛として認められます。ですが日本では、間違いなく過剰防衛です。(そもそも銃の携帯は禁じられていますが……)国によって、どこまでは正当防衛で、どこからが過剰防衛なのかは異なりますし、日本にしても実際に裁判をして見なければ、過剰防衛かどうかの判断が付かないケースも多々あります。例えば、ひ弱な女性がたまたま持っていた武器で暴漢を殺してしまった場合、武道をたしなむ体格も良い男性が暴漢を殴り殺してしまった場合、同じような犯人であっても、前者と後者では、判断は異なってきます。

 
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